飲食店のM&Aとは?
M&AとはMergers(合併)and Acquisitions(買収)の略です。
いわゆる、複数の企業を統合したり、企業を買い取ったりすることを意味します。
以前は負の意味で捉えられていましたが、現在では企業の幅広い課題解決策として、社会に受け入れられるような存在であるといえます。また企業を経営するうえで、知っておかなければならない経営戦略でもあります。
飲食店のM&Aの目的として、新規客層の獲得や事業拡大、原材料の調達コストの削減などが挙げられます。
M&Aのメリット・デメリット
たいていの場合メリットがある一方、デメリットも考えられます。
メリット、デメリットの順に説明します。
~M&Aのメリット~
- 低コストでスタートできる
- ノウハウが獲得できる
- 優秀な人材の確保
- 経営予測が容易
1.低コストでスタート出来る
1つ目のメリットは飲食店を開業する際、M&Aでは普通に飲食店を開業する場合に比べて、圧倒的に低コストで始めることが出来ることです。M&Aでない場合、何から何まで一から作らなければならないので、時間も要し、コストもかかります。
2.ノウハウが獲得出来る
2つ目のメリットは最初からノウハウ(※1)があるということです。飲食店のノウハウがなければ、飲食店を開業し自分で一から始める際、苦労することがあります。しかしM&Aでの開業は、基本的にノウハウが構築された状態からのスタートなので、ノウハウを身に付ける必要がありません。業態の開発が不要で飲食店の細かいノウハウが入手出来ます。
※1「ノウハウ」
“企業活動に必要な生産・経営・管理・技術などに関する知識また経験から得た情報”
3.優秀な人材の確保
3つ目のメリットは、優秀な人材の獲得が容易であることです。店舗の譲渡契約が完了した後に、既存の従業員に継続して働いてもらうように依頼することが出来ます。もし承諾されれば、その従業員はすでにその店を熟知しているので即戦力といえるでしょう。
また日本は少子高齢化が進んでおり、人材不足といわれています。そのような面でも、人材調達の負担が少なくなるので大きなメリットとなります。
4.経営予測が容易
4つ目のメリットは、経営予測が容易だということです。M&Aで買収し新規参入する場合、常連等の顧客を保持した状態で営業を始めることが出来ます。
また過去のデータがあるため、最初から経営予測がたてやすいというメリットがあります。
次にデメリットを説明します。
~M&Aのデメリット~
- コンセプトの変更が困難
- 買収された企業の従業員の不満
1.コンセプトの変更が困難
1つ目のデメリットは、コンセプトの変更が困難であることです。
例えば、飲食店をM&Aした場合を考えてみます。ラーメン屋をM&Aしたとすると、そのラーメン屋を寿司屋に変更しようと思っても、急に変えることは困難ではないでしょうか。
ノウハウを獲得出来るというメリットがある代わりに、コンセプトを自由に変えることができないというデメリットがあります。また無理やりコンセプトを変更すると、常連等の顧客を失う可能性があります。
2.買収された企業の従業員の不満
2つ目のデメリットは既存の従業員の不満が発生する可能性があるということです。
既存の従業員が継続して働くことが決定したとしても、新しい経営者との間で上手く信頼関係を築くことができなければ、退職する可能性もあると考えられます。
したがって、M&Aで開業した場合、既存の従業員が不満を抱いていないかなどの気配りも大事であることがわかります。
居抜きとM&Aの違いは?
居抜き(※2)の場合、内装や設備が引き渡されます。M&Aでの場合、内装や設備、お店の営業権、そして従業員なども含めて引き継ぐことができます。これが一番の違いです。
M&Aの場合は、店舗の設備だけでなく、従業員、さらには顧客など商売そのものを引き継ぐというところに大きな差があります。もう少し分かりやすく説明します。
※2「居抜き」
“建物を売る場合、調度品または設備・商品をそのままにして売ること”
居抜き
お店の設備は引き継ぎますが、お店そのものは引き継ぎません。よって新しくお店を始める方が新たに集客する必要があります。
M&A
お店の設備はもちろん、従業員など、そのお店のそのままの経営を引き継ぎます。よって売り上げ、顧客はそのまま続き、従業員や取引先も前と同様に続いていきます。
居抜きとM&Aの比較
居抜きとM&Aの違いについてもう少し深堀りしていきます。
- 譲渡価格
- 依頼先
譲渡価格
居抜きとM&Aの譲渡価格の比較をします。
居抜きはM&Aに比べて、非常に安いです。なぜなら本来だったら壊さなくてはならないものや、お金が支払って壊す場合、居抜きが行われると売り手としては助かります。
お金を払い、取り壊すなら、そのお店の設備を買い手に引き継いでもらった方が、買い手としては好都合なのです。
M&Aの場合は、経営を引き継ぐことから、その企業が儲かっているかどうかの業績が譲渡価格に大きく影響を与えます。よって、どの企業を選ぶかによって譲渡価格も大きく変わります。
依頼先
売り手の立場になって、居抜きで借りてくれる方を探す、M&Aで買ってくれる方を探すとなった時、居抜きとM&Aでは依頼先が異なります。
居抜きの場合は不動産賃貸の仲介になるので不動産の業者に依頼、M&Aの場合はビジネス売買ということになるので、M&Aアドバイザーに依頼します。
飲食店のM&A事例
身近な飲食店を例にM&Aの事例を挙げます。
- 株式会社ゼンショーホールディングス
- 株式会社プレナス
株式会社ゼンショーホールディングス
大手牛丼店の「すき家」をご存知でしょうか。「すき家」は株式会社ゼンショーホールディングスが経営しています。この株式会社ゼンショーホールディングスは、株式会社ココスジャパンや株式会社なか卵をM&Aをしました。
新規客層の開拓が目的として考えられます。
株式会社プレナス
「ほっともっと」や「やよい軒」を経営する株式会社プレナスは宮島醤油フレーバー株式会社をM&Aをしました。島醤油フレーバー株式会社の調味料やインスタント食品を活用して既存飲食店の生産コストを下げることが目的と考えられます。
M&Aを個人でやるには
個人で始めるために、どのような手段があるのかを説明します。
低コストではじめる
M&Aの目的にもよりますが個人でM&Aをやるには、できるだけコストを抑えることが前提であると考えられます。では低コストではじめるためにはどのようなことが必要なのか、それはM&Aせざる負えない企業を選ぶことです。
日本は少子高齢化であるために、経営者の高齢化や後継者不足問題などによってM&Aを検討せざる負えない企業が増加しています。そのような企業はかえって、店舗を取り壊す費用も削減できることなどから、引き継いでもらえることが好都合といえるでしょう。
以上のことから、低コストでのM&Aが可能です。よって低コストで始めるためには、このような問題を抱えている、店舗に目を向けるとよいでしょう。
M&Aアドバイザーへの相談
未経験の人が、M&Aを個人で始めるための方法としてM&Aアドバイザーへの相談があります。M&Aアドバイザーに相談すると、事前相談から最終契約まですべて任せることができ、要望に沿って案件を探してくれるので個人でのM&Aに有効な方法だといえます。
M&Aマッチングサイト
売り手側と買い手側の両者が希望する条件をもとに、M&Aアドバイザーが照らし合わせマッチングさせてくれるサイトもあります。
希望条件に合った対象店舗を探し、M&Aアドバイザーが仲介していることから、初心者や個人でM&Aを考えている方には適しているといえるでしょう。
M&Aしたいなら
M&Aをするための手順やどのようなことが重要なのかを以下で説明します。
- 店舗選びを怠るな
- 前のオーナーの意思を引き継ぐ
- M&Aアドバイザー選びを慎重に
店舗選びを怠るな
M&Aを始める際に一番重要なことを説明します。それはどの店舗をM&Aするかということです。黒字経営であることは当然の条件でありますが、経営状況が悪い店舗を選んでしまった場合、失敗のリスクが高まり、M&Aしたもののかえって逆効果になってしまう可能性があります。
一方、成功している店舗を取得して開業した場合、失敗のリスクも低くスムーズに立ち上げることができるでしょう。店舗選びにおいて実績のある店舗を選ぶことはもちろんでありますが、既存の従業員やその店舗のノウハウまでもあらかじめ把握しておく必要があるでしょう。
またその店舗をM&Aすることで、自分にどのようなメリットがあるのか、将来性を見据える必要もあるでしょう。
前のオーナーの意思を引き継ぐ
前のオーナーの意思を引き継ぐことは、とても重要なことです。M&Aで開業するということは、元店舗の従業員やノウハウが入手できます。
しかし、前のオーナーの意思を引き継がない場合、元店舗が長い間培ってきた従業員、顧客との信頼関係が壊れてしまうおそれがあります。ノウハウもむだになるでしょう。もし前のオーナーと意思や考えが合わない場合、その店舗をM&Aすることを控えたほうがよいと考えられます。
M&Aアドバイザー選びを慎重に
M&Aでは依頼先がM&Aアドバイザーであることは説明しましたが、そのM&Aアドバイザー選びも重要であります。なぜ重要かというとM&Aアドバイザーによって対応が異なります。
M&A成立後も、必要に応じて前のオーナーに問い合わせるM&Aアドバイザーもいますが、M&Aアドバイザーを仲介せずに、自ら前のオーナーに問い合わせなければならない場合もあります。
M&Aでは店舗選びも重要でありますが、最良な店舗を選ぶためには、誠意のあるM&Aアドバイザー選びが必要不可欠です。