あなたが経営している会社には後継者はいますか?
子供に継いで欲しかったけど他の仕事を始めてしまった、優秀な従業員に継がせたいけどどうしたらいいかわからない…など、後継者に頭を悩ませている経営者の方は多いのではないでしょうか?
実際どうしたらいいかわからず、自分が働けなくなるときには廃業しようと考えている人が多いのが現状です。
そこで利用したいのが事業承継支援の制度です。
事業承継の詳細と支援について見ていきましょう。
事業承継とは
事業承継は自分が経営している会社や事業を後継者に引き継ぐことを言います。
事業承継をするのは会社や事業そのものだけではなく
・経営権
・役職
・人(従業員、取引先など)
・株式
・現金、預金、手形、在庫
・不動産(会社所有の土地・建物)
・動産(自動車や機械装置、工具など)
といった人や物、お金などが含まれます。もっと言えば経営理念や負債なども含めて経営する会社のすべてを後継者に引き継ぎます。
そして事業承継は3つの方法で行われます。
・親族内承継(経営者の子供や兄弟など親族に承継させる方法)
・親族外承継(役員や従業員などに承継させる方法)
・M&A(合併と買収のこと。企業から企業に承継させる方法)
ここまでわかっていても、子供もいない、引き継いでくれる親族もいない、経営を任せられるだけの従業員が育っていない、信頼できる企業を知らない、失敗しそうだから承継を悩む…
そんな方におすすめしたいのが日本政策金融公庫の「事業承継マッチング支援」です。
日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫は民間金融機関を補完し、事業に取組む方々等を支援する政策金融機関です。
2008年に国民生活金融公庫と農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の国際金融等業務部門が統合して設立されました。
日本政策金融公庫の基本理念には「国の政策の下、民間金融機関の補完を旨としつつ、社会のニーズに対応して、種々の手法により、政策金融を機動的に実施する。」と記載されており、日本経済を成長・発展させたいという国の意図が経営に反映されています。
「民間金融機関の補完」とあるように、民間の金融機関と連携しながら中小企業・小規模事業者への融資に取り組んでいます。例えば開業前後の会社や始めたばかりの事業への融資などを行っています。
事業承継マッチング支援とは
ここまで見ても「開業する人にしかメリットがなさそう…」と、自分にはあまりメリットがないように感じる方もいらっしゃるかもしれませんがそんなことはありません。
では事業譲渡をする人のメリットを確認しておきましょう。
①譲渡収入の確保
廃業をする場合は設備や在庫の処分、店舗の原状回復などに費用がかかる場合があります。約4割の方は、廃業の際に100万円以上の費用がかかっているそうです。
事業承継をすればこれらの費用を抑えることができますし、株式の譲渡対価などの資金を受け取ることができる場合があります。資金を受け取れた場合は、引退後の生活費にあてることもできます。
②雇用関係・取引先の引き継ぎ
廃業をしてしまったら従業員が職を失い、取引先にも迷惑をかけてしまうことになります。
事業承継の際に従業員の雇用維持を条件にすれば、従業員が職を失うこともありません。また、取引先も引き継いでもらえば、取引先に迷惑をかけることもなくなります。
廃業後に従業員や取引先の心配をする必要がなく、むしろ感謝されるケースもあるでしょう。
③その他
譲受先のノウハウを得ることができるので事業を成長させることができる、清算をしないことによって会社の価値が上がるなど会社や事業自体にもメリットがあるのです。そしてこれらは譲受する側のメリットでもあります。
例えば以下のことが挙げられます。
・設備が整った会社を承継するので開業資金を少なくすることができる
・経験豊富な従業員を引き継ぐことができる
・関係を築いてきた取引先を引き継ぐことができる
・地域との関係性を引き継ぐことができる
事業承継マッチング支援制度の利用の流れ
そんな事業承継マッチング支援ですが、原則は日本政策金融公庫からの事業資金の借入残高がある方(※)が対象となっています。
借入残高がなくても、「継ぐスタ」といって「事業を受け継いでスタートする創業形態」を希望する方や中小企業・小規模事業者の支援に取り組んでいる団体(商工会議所等)からの紹介を受けた方なども対象となります。
※借入の完済日から起算して5年以内にサービスに申込登録する方を含みます。
自分が対象であることがわかったら、いよいよサービスの利用です。
どういった流れになるのか確認しておきましょう。
①マッチングの相手探し
・経営者の希望を踏まえた相手探しをしてくれます。
・相手が見つかったら、譲渡希望者と譲受希望者の両方に日本政策金融公庫が「ノンネームシート」をお渡しします。
※ノンネームシートとはサービス申込書に基づく資料のことで、個社や個人が特定されない範囲の情報が記載されています。
②相手との交渉に向けた検討
・ノンネームシートに基づいて交渉を希望するかどうかの検討を行います。
・譲渡希望者、譲受希望者が共に交渉を希望する場合、日本政策金融公庫が面談場所や日時の調整を行います。
③相手との交渉
・譲渡希望者と譲受希望者の間で事業の譲渡に向けた交渉を行います。
交渉の内容は譲渡希望の事業内容や財務内容の精査、秘密保持契約の締結、条件交渉などです。
・交渉をする際に専門家からの支援を希望する場合、日本政策金融公庫が「事業引継ぎ支援センター」などを紹介してくれます。
④譲渡契約の締結
・交渉の結果、合意がなされた場合は譲渡契約を締結します。
・譲渡契約の締結も譲渡希望者と譲受希望者の間で行いますが、交渉と同様に専門家の支援を希望する場合は「事業引継ぎ支援センター」などを紹介してくれます。
申込みについて
必要書類
事業承継マッチング支援の申込みには次の書類が必要です。
なお、提出書類の返却は行っていないようですので控えが必要ならコピーをとるなどしておきましょう。
・事業の<span style=”text-decoration: underline;”>譲渡</span>に向けた支援申込書(※1)
・事業の<span style=”text-decoration: underline;”>譲受</span>に向けた支援申込書(※1)
⇨事業者用と創業希望者用があります。
創業希望者用は継ぐスタ計画書が一体になっています。
・最近1期分の申告決算書の写し(個人営業の方。※2)
・最近1期分の確定申告書・決算書の写し(法人営業の方。※2)
・企業案内、商品・製品パンフレット(発行されている場合のみ。※2)
・以下のいずれにも該当しない場合は紹介状(※1)
①日本政策金融公庫に事業資金のお借入残高がある方
②日本政策金融公庫の事業資金のお借入のご完済日から起算して5年以内に、サービスの申込登録をされる方
③事業を受け継いで創業(継ぐスタ)することを希望されている方
※1…日本政策金融公庫のサイトに記入例や原本があります。
※2…自身で用意します。
申込み方法
メールまたは郵送で申込みをします。
申込登録後、おおむね1週間程度で日本政策金融公庫から申込登録があった旨の連絡があります。連絡は電話もしくはメールで行われます。
●メールでの申込みの場合
マッチング支援専用アドレス(jigyosyokei-matching@jfc.go.jp)に必要書類を添付して送信します。
いくつか注意事項があります。例えば
・メールの件名を「事業承継マッチング支援申込書及び添付書類一式」とする
・支援申込書は申込人名(法人の場合は代表者名)の自署が必要なため、自署した支援申込書をPDF等にして添付する
・メール及び添付ファイルの合計容量が70MBを超えないようにする
といったことが挙げられています。
メールを送信する前にはきちんと注意事項を確認しておきましょう。
●郵送での申込みの場合
郵送の場合は必ず<span style=”text-decoration: underline;”>事業承継マッチング支援申込書専用</span>である次の郵送先に直接送ります。
〒100-0004
東京都千代田区大手町1-9-4
大手町フィナンシャルシティ ノースタワー
日本政策金融公庫 国民生活事業本部
事業承継支援室 事業承継マッチング支援担当
注意事項としては次のようなものが挙げられます。
・大事な書類のため簡易書留等、日本政策金融公庫が受領したことが分かる方法で発送する(任意)
・ホームページからダウンロードできる宛名ラベルを利用する
まとめ
自分が頑張って作り上げた会社をかわいい子供に継がせたいという人は多く、特に長男に継がせたいという人が8割程度になると言われます。
また中小企業・小規模事業者の3つの事業承継の方法のうち、約9割は親族内承継だそうです。
このように事業承継先は親族にこだわるという経営者が多いようですが、ある調査によると「親の事業を承継したくない」と答えた人が約5割にのぼったそうです。実際に事業承継により直近5年以内に経営者となられた方のケースでは、親族外承継が約25%、M&Aが約40%となっており、親族にこだわった承継は難しくなってきているのが現状のようです。
作り上げた会社を、会社で働く従業員を守っていくためにもきちんと事業承継をすることが大切です。お悩みの場合は日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援を利用してみてはいかがでしょうか。
中小企業・小規模事業者の支援に特化している金融機関ですので頼りになると思います。