飲食店開業前に理解しておくべき原価率計算について

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飲食店を健全な状態で経営するのであれば、原価計算が必要不可欠になります。原価計算をしっかりしていないと、経営に失敗してしまう恐れがあります。本記事では飲食店の正しい原価計算方法について紹介します。

1.原価計算とは?何のためにやるの?

そもそも何故原価計算が飲食店経営では必要になるのでしょうか。原価計算をする必要性について解説しましょう。

1-1. 料理には材料・人件費が必要

飲食店で作る料理には全て材料が必要になります。1つの商品の中に、材料費用、人件費が含まれています。いくら質の良い商品を提供しても、材料費と人件費が占めているとお店の利益にはなりません。
飲食店の利益を作るために、商品の中で、利益、材料、人件費という配分をどの程度にするのかをしっかり検討するようにしましょう。

1-2. お店の経営状態を維持するために

商品毎の原価率をある程度把握しておくことで、自分の飲食店では何が利益をもたらしているのかを知ることができます。行列の出来る人気店の中には、売れ筋商品の原価率が高く、集客が減った途端に一気に赤字に追い込まれ閉店に追いやられてしまうケースもあります。
閉店に追いやられてしまう飲食店は決して開業当初に設定した原価率が誤っていたわけではありません。

しかし、材料費の高騰などで値段が変動し、原価率が高くなってしまえば、結果的にお店に利益を少なくしてしまう可能性があります。原価率は常に変動するものなので、定期的に確認する必要があると認識しておきましょう。

2.原価計算の仕方

飲食店で原価計算が大切なことを理解したところで、実際の原価計算の方法を解説していきましょう。原価計算を行う前に、まずは最低限知っておくべき知識を把握しておきましょう。

2-1.自分の業態の平均的な原価率を知っておく

飲食店といっても、ラーメン屋、中華料理屋、洋食、喫茶店など様々な業態があります。業態によって原価率が異なります。

ラーメン屋 33%〜35%
中華料理 33.9%
居酒屋 30%
喫茶店 22.4%

業態によっては、30%超えている業態もあれば、30%以下の業態もあります。一般的に30%前後が良いとされているので、30%前後で原価率を設定しましょう。しかし、同じ業態の原価率が30%だから無理に合わせる必要はありません。

大切なことは。お店の経営をするために安定させることです。原価率は常に変動すると認識しながら計算を定期的に行いましょう。

2-2.歩留まりを考慮する

原価率を設定していても、飲食店では想定していた原価率よりも高くなってしまうことがあります。原価率が高くなってしまう要因として、「歩留まり」があります。
「歩留まり」とは一体何か分からないという方のために簡単に解説をすると、「食材として使える割合はどの程度なのか」ということです。
例えば、マグロを1キロ10,000円で仕入れたとしましょう。仕入れた魚の原価は100gあたり1000円です。しかし、マグロの部位が全て使えるわけではありません。骨や筋などを取り除き、実際に使えるのは800gだとします。すると、1キロ10,000円のマグロの原価は、100g1000円ではなく、1250円となり、250円分高くなってしまうのです。

原材料の差を考慮しない状態で提供をすると、設定していた粗利よりも低くなってしまい、多く販売しても結果的に赤字になってしまうのです。
魚だけでなく、野菜、肉全てに歩留まりは存在するため、原価を計算する際は、歩留まりの割合を考慮しましょう。
歩留まりは提供する料理によって大きく異なるため、一度商品を作った段階でどの程度の材料が必要になるのかを割り出し、割り出した分量から材料あたりの原価を設定していくと、歩留まりを考慮した計算が可能になります。

2-3.月間で原価計算をする「先入先出法」で計算をする

料理単体の原価率を割り出しても、お店全体で提供する商品の原材料を割り出すには不十分であると言われています。
何故不十分かというと、材料はその月に全て使い切る場合わけではありません。仕入れた材料のタイミングによっては翌月に持ち越すこともあります。

さらに別の月では同じ材料でも仕入れることがあるため、全体を正確に網羅しているとは言い切れません。
仕入れた材料を正確に把握するために、「先入先出法」で計算をします。
計算方法は下記の通りです

・前月繰越分+仕入れー翌月繰越=売上原価
・売上原価÷売上高×100=売上原価率

計算の流れは、売上原価を出し、そこから売上高を掛け合わせたものが、売上原価率になります。
先入先出法で原価率を計算しておけば、お店全体の原価率を把握出来るため、必ず計算をするようにしましょう。

2-4.原価率を正しく計算するために大切なこと

原価率の割り出し方法や考慮しなければならないことを把握していても、原価率を正しく割り出せないことがあります。
正しく割り出せない場合の原因として、1つの商品に対し、どのような分量で商品を作るのかを把握していないことが考えられます。
正確な計算をするために大切なことは、歩留まりだけでなくレシピ表などを作成し、料理の正しい作り方も把握しておく必要があります。
正しい原価率を計算するために、まずは商品の作り方をしっかり把握しておくようにしましょう。

3.原価率から価格設定をする際の注意点

正しい原価率を割り出せば、商品にふさわしい価格を設定することが可能です。
しかし、価格を設定する際は気をつけなければならないこともあります。次のような項目に注意をしながら価格設定をするようにしましょう。

3-1.机上で価格を設定しないようにする

飲食店として理想的な価格は、全ての商品の原価率が統一して30%を維持していることです。30%を統一して商品を作ると、目玉商品が出来ないというデメリットがあります。
飲食店の中には、「赤字覚悟の出血大サービス」などと称して、価格と中身が明らかに釣り合っていない商品があります。しかし、このような商品はお客さんからの反応がよく、商品目当てで訪れることも珍しいことではありません。

机上の空論のみで価格を設定すると、思い切った商品を提供出来ないデメリットもあるため、設定する際は全ての商品を統一するのではなく、赤字になってしまうが集客を集めるために必要な商品、注文数は少ないが、原価率を抑え利益を稼ぐ商品をバランスよく配分するようにしましょう。

3-2.材料費が変動する前に検討をする

定期的に材料価格が変動するものがあります。たとえば小麦粉、油、お酒などの商品です。商品を扱う際は、常に材料費の変動を確認するようにしましょう。
値段を上げる事は簡単なことですが、値段を改訂したことによりデメリットもあります。特に原材料が確実に変動すると判明した際は、価格を慎重に検討するようにしましょう。

4.原価率を低く抑える方法

安定した経営をするためには原価率を少しでも抑える必要があります。
原価率を少しでも抑える方法は実際にどのようなものがあるのでしょうか。原価率を抑える方法を紹介しましょう。

4-1.商品の値上げ

最も手取り早い方法が商品の値上げです。商品の価格を改訂することで、原価率を低く抑えることが可能です。しかし、商品の値上げはお客さんにとってはマイナスな影響を与えてしまうため、最悪の場合値上げをした途端に集客が減ってしまう可能性があります。
商品を値上げする際は、単純に商品価格をあげるのではなく、値上げをしても納得するような仕組みを作り、顧客満足度を高めるようにしましょう。

4-2.仕入れ業者の見直し

仕入れている業者の材料がそもそも高い商品であれば、必然的に原価率が高くなってしまう可能性があります。安い業者に変えて商品価格を調整する方法もおすすめです。
しかし、ある程度経営が安定したところで業者を変えると、「味が変わった」とネガティブな印象を受けてしまうお客さんもいます。業者を選定する際は、極力新規参入、リニューアル段階で検討をしましょう。

新規開業の飲食店の場合、仕入れ業者をあらかじめ複数検討し、品質がよく原価率が安定しそうな仕入れ先を検討しましょう。業者によっては大量注文で単価が下がるケースもあるので、業者と交渉する際は、様々な状況を考慮しながら納得のいく価格で取引をするようにしましょう。

4-3.廃棄ロスを抑える

原価率を安く抑えても、廃棄ロスが出てしまっては、原価率が高くなってしまいます。廃棄ロスを極力減らすことも大切です。ロスを抑えるためには、大きくわけて2つのロスがあることを把握しておきましょう。

・必要不可欠なロス
・なくすべきロス

飲食店では商品開発や、骨や筋の部分を使用することで、絶対に出てしまうロスがあります。絶対に出てしまうロスは、必要なロスとして生じると割り切りましょう。

一方で、無くさなければならないロスがあります。代表的なものが材料を大量に発注してしまった場合や、材料を腐らせてしまった場合です。無駄なロスになるため、極力無くすようにしましょう。

無駄なロスを無くすために大切なことは、1日あたりの廃棄ロスがどの程度出てしまうのかを把握しておくことです。
廃棄があまりに出てしまうお店は一度廃棄の原因を特定し対策方法を検討しましょう。
廃棄ロスを避けるメニュー作りも原価率を下げるためには大切です。

例えば、野菜や肉を使い切る商品を開発すれば、廃棄ロスを極力抑えることが可能になります。
調理法によっては、長期保存が出来る商品もあるため、商品開発をする際は、ロスを抑える方法を検討しながら商品を開発するようにしましょう。

4-4.ボリュームを調整する

商品開発段階で、商品のボリュームに原因があることも考えられます。商品量を調整して最適な分量を見定めることも大切です。一方で、開業後にボリュームを減らすなどお客さんにとって不利益になってしまうことをしてしまうと、お客さんが離れてしまうリスクがあります。
開業前にしか出来ないアプローチと開業後に出来るアプローチがあるので、それぞれの特性を理解しながら商品価格を設定するようにしましょう。

5.まとめ

原価計算は飲食店を健全に経営するためには必要不可欠な要素になります。これから飲食店を経営しようと検討方は、本記事で紹介した原価計算を活用しましょう。
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